第42号    2004年10月21日発行 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●   NPO法人エコプラザさばえ(鯖江市環境情報学習センター)メールニュース ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★  <目次>  ▽エコプラザさばえ土曜塾 第五回 10/23開催(エコツアーは中止!)  ▽クマ出没情報  ▽イベント・10月24日(日)「ふれあいコンサート」(鯖江)       ・10月30日(土)地球を守る!環境展(福井)       ・10月31日(日)たけふ環境楽(武生)       ・11月12日(金)レスター・ブラウン氏特別講演(大阪)  ▽Dr.コトー・環境情報シリーズ「イタイイタイ病〜すべては闇の中」  ▽「クマの災難」  ▽「クマの大量駆除と続発する人身事故について」 ■■エコプラザさばえ土曜塾 第五回「いもほり&焼いも」  楽しくいもほりをして、ほっかほかの焼いもをみんなで食べよう! 日時:10月23日(土)9:15〜15:00    ・午前中はエコプラザファームにておイモ堀り    ・午後は、エコプラザ「苗」プロジェクトのためのどんぐり拾い     (講師はエコプラザ会員加藤瑞樹さん) 集合場所:さばえNPOセンター(雨天決行、着替えも必要) 持ち物:移植ゴテ、カッパ、軍手、長靴、ビニール袋(スーパーの袋)2〜3枚、     弁当、水筒、タオル、筆記用具 問合せ&申込み:エコプラザさばえ事務局 真田まで ※「エコツアー in かたかみ」は、片上地区に熊が出没のため中止になりました。 ■■クマ出没情報  文殊山を控える鯖江市片上地区では毎日のように目撃情報があるようで、河和田方 面、今立方面でも柿の実を食べられたなどの情報が聞かれます。クマだけでなくイノ シシや狸なども..。山には一体何が起こっているのでしょうか。 ◇鯖江で小熊一頭がオリにかかる  19日夜、鯖江市上河内の民家の庭で小熊がオリにかかった。この民家では、今月に 入って熊が庭にまで出没し、猟友会がオリを仕掛けていて10日にも大人の熊が捕獲さ れている。捕獲された熊は体長が50センチから60センチの小熊。市では付近に親熊が いるおそれもあるとして警戒を呼びかけ中。 ◇今立から  今年はあちこちで「クマさん」が出てきて話題になっていますが、ついに我が家に もいらっしゃいました。  14日の夜に庭のカキノキに登り、枝をたくさん折りあちこちに食べ散らかしました 。急きょカキノキの根元にトタン板を巻きました。15日には効果があり来なかったよ うですが16、17とまたたて続きに来ました。とくに17日夜は、最初に枝を折った木が さらに枝を折られ、なんとトタン板を巻いた木にも上のほうに爪あとが...。どう やって登ったのか?  木の周り中、クマさんの”落し物”だらけです。落し物を見るとイチョウの実ばか りで、あんなにニオイの強い物を食べるのですね。時間帯としては夜中の3時前後だ と思います。私達のところは本当に里山でほとんどが杉林なのですが奥の山に餌が無 いので、山伝いに下りてくるのでしょうね。昼は活動しないのでめったなことはない と思いますが、あまり気持ちのいいものではありません。おなかが一杯になったら奥 山に静かに帰っていただきたいです。(山室在住、Hさんから) ◇東部三地区警戒/鯖江市役所  最近、県内いたるところで熊が出没し、人の被害も報道されておりますが、鯖江市 においても、片上、北中山、河和田の各地区に熊が出没し、その都度、警察、猟友会 、市が出動しております、現在までは人への被害もなく済んでおります。今後、熊が 越冬するまでの間に、「えさ」を求めて、里に下りてくることも予想されるため、下 記の注意事項を守っていただき、被害にあわないよう注意してください。 ・1人で山に入らない。 ・熊に出会ったら大声を出さない。 ・山に入る場合には、鳴り物を身につけて入る。 熊に出会った場合は次のいずれかに連絡をしてください。  鯖江警察署 52-0110  鯖江市役所 51-2200  猟友会会長 090-1390-1181 【問合先】農林課 53-2226 http://www.city.sabae.fukui.jp/latest_info/kuma.html ◇熊から身を守る基本/福井県自然保護センター  クマによる人身被害を防ぐには「クマと遭わない」「クマを引き寄せない」ことが 基本です。それでも遭ってしまったら、「興奮しない、させない」などの適切な対応 が必要です。 1)ツキノワグマについて ・福井県内の山間地は、自然環境が豊かで、ツキノワグマも600頭程度生息している と考えられます。クマは国内の数少ない森林性大型哺乳類であり、私たちの住む自然 界を構成する大切な一員です。 ・ツキノワグマを「猛獣」だと思っておられる人もいますが、本来は、大変臆病で温 厚 な動物です。過度に恐れることは決してありませんが、とにかく、人とクマとの遭遇 を少なくすることが、結果的には被害の防止になると考えられます。 2)クマを引き寄せていませんか ・人家のまわりに生ゴミなどを無造作に捨てたり、置いたりしないでください。 ・キャンプ場などでは、ゴミの管理などを徹底してください。 ・キャンプや登山、渓流釣りなどででたゴミは必ず持ち帰ってください。 ・人家のまわりで収穫の予定の無い柿やクリ等の実は撤去してください。 ・山野にある墓地の供え物等は持ち帰るようにしてください。 3)クマと遭遇しないために ・クマに自分の存在を知らせてください。  クマは、嗅覚や聴覚が人間より優れ、人の接近をいち早く察知し、人を避けます。  ラジオ、笛、鈴などで音を出して行動してください。 ・クマのいるところで行動しないでください。  クマは、明るい場所を避けます。見通しのよい明るい場所で行動してください。  クマの糞や足跡などを見つけたら、迂回するか、引き返してください。 ・クマのエサとなる実のなる林には近づかないでください。  クリ、ドングリ類(クヌギ、アベマキ、コナラ、ミズナラなど)、クルミ、カキ、  アケビなどが実っている林には日中でもクマが潜んでいますので、近づかないよう  にしてください。 ・早朝や夕方の外出は注意が必要です。  クマは、人里近くに、夕方に出てきて、夜間行動することが多いので、夜間はでき  るだけ外出しないようにしてください。この時間帯に外出する場合には、単独での  行動は避けてください。特に、クマによる農作物等の被害歴がある場所での行動は  危険です。 ・人家周辺でも細心の注意をしてください。  人家周辺でも出没していますので、決して、よそ事などと思わず、常に周囲に  細心の注意を払うよう心がけてください。 4)それでも、クマに遭遇してしまったら ・子グマに出会った場合は、そっと立ち去ってください。  見えなくても、親グマが近くにいます。 ・とにかく落ち着いてください。  クマまで距離があるようなら、そっと立ち去ってください。  急に大声を出さないでください。  大声をだしたり、ものを投げつけたりするとクマは興奮します。  クマが逃げる機会を与えるよう心がけてください。 ・静かに退避してください。  クマから目を離さないようにして、できるだけゆっくりと後退してください。  持ち物や帽子、衣類などを静かに地面に置いて、クマの注意をそらしてください。  クマとの間に立木などの障害物をおける位置に移動できれば、突進を防ぐことも  できます。 ・攻撃が避けられないときは、急所を守ってください。  もう攻撃は避けられない状況になったら、すばやく地面の窪みにうつ伏せになり、  両手で首の後ろをガードします。ザックを担いでいれば背中は守られ、一番大事  な頭部、首部が守られます。 5)目撃情報は市町村または最寄の警察署へ  人家近く(人里)でクマを目撃した場合は、直ちに市町村または最寄の警察署へ連 絡してください。情報が多く集まれば、パトロールや集団登下校などの対策が迅速に 実施できます。提供していただきたい情報は、「場所」「時間」「大きさ」「何をし て いたか」などです。 http://www.fncc.jp/index2.htm PDFファイルはこちら http://info.pref.fukui.jp/shizen/kuma.pdf ---------------------┤イベント情報├--------------------- ■「ふれあいコンサート」  絵画を鑑賞しながら、音楽を楽しむというぜいたくな秋のひとときを過ごしてみま せんか? 日時:10月24日(日) 場所:鯖江市資料館1階まなべホール(さばえNPOセンター隣) 入場料:無料 ・1回目 10:00〜11:00 箏の演奏と朗読 奏者:市橋典子 ・2回目 14:00〜15:00 二胡の演奏と朗読 奏者:李丹 ・朗読はいずれも増田悦世さん(エコプラザ会員) 主催:鯖江市福祉の地域づくり推進協議会 問い合わせ:鯖江市資料館 TEL.0778-51-5999 ■地球を守る!環境展  身近な暮らしの中の、環境・エネルギーについて考えましょう! 日時:10月30日(土)13:30〜16:00 会場:福井県立図書館 多目的ホールほか <多目的ホール>  13:30 開会あいさつ      表彰式「温暖化ストップ親子大作戦」         「地球を守る環境ポスターコンクール」  14:00〜15:30 講演会          テーマ:「エネルギー・環境にやさしい暮らし」          講師:中岡章氏((財)電力中央研究所参事・工学博士)    15:30〜 参加者とのフリートーク  16:00 閉会 <小集会室>  14:00〜16:00「省エネかるた」大会          「環境紙芝居」対象:小学生など(粗品プレゼント) <エントランスホール>  10月30日(土)〜11月7日(日)  「地球を守る環境ポスターコンクール入賞作品、省エネ・環境パネル展示」  主催:福井県、資源とエネルギーを大切にする運動福井県推進会議 共催:(社)ふくい・くらしの研究所、(財)電力中央研究所    問合せ先:福井県県民生活部生活課 TEL.0776-20-0287      福井県福祉環境部環境政策室 TEL.0776-20-0301      (社)ふくい・くらしの研究所 TEL.0776-27-0626 ■第4回 たけふ環境楽  〜山崎秀雄・丸山昇両講師と一緒にアウトドアしましょ!〜  野鳥や野生動物について、薬草について、おもしろ楽しく学習できますよ! 日時:10月31日(日)8:30〜11:30(受付8:10) 集合場所:大虫の瀧遊園地(環境のため、お車の相乗りにご協力下さい) 持ち物:水筒・汚れてもよい服装で 参加費:無料 問合せ・申込み:たけふ環境楽実行委員会(TEL.0778-28-1123)         武生市エコビレッジ交流センター内 野村 ■レスター・ブラウン氏関西特別講演「経済と環境を両立させるプランBへの道」  『地球白書』を刊行して地球環境問題を世界に発信したワールドウォッチ研究所の 設立者、レスター・ブラウン氏が来日されます。「世界で最も影響力のある思想家の 1人」(ワシントン・ポスト紙)と評される氏の講演と、参加者同士のネットワーキン グもお楽しみ下さい。 日時:11月12日(金)13:00〜17:00(開場12:30) 場所:大阪市中央区民センター(中央区久太郎町1-2-27)     地下鉄堺筋線・中央線堺筋本町駅から徒歩1分 <プログラム> 13:00〜14:00 枝廣淳子プレ講演 14:00〜16:00 レスター・ブラウン講演&対談 16:00〜17:00 書籍販売&サイン会 参加費:当日5500円(事前振込5000円)/学生当日4500円(事前振込4000円)     ・枝廣淳子講演のみ/当日2500円(事前振込2000円)     ・レスター・ブラウン講演のみ/当日3500円(事前振込3000円)     ・レスター講演学生料金/当日2500円(事前振込2000円) ※参加費としていただきました資金は、レスター・ブラウン氏の研究所の活動を支え るために寄付いたします。 <講師プロフィール> ・レスター・R・ブラウン (Lester R. Brown):  1934年、米国ニュージャージー州生まれ。ラトガース大学、ハーバード大学で農学 ・行政学を修めた後、農務省で国際農業開発局長を務める。1974年、地球環境問題に 取り組むワールドウォッチ研究所を設立、1984年に年次刊行物『地球白書』を創刊。 2001年5月、アースポリシー研究所を創設して所長となる。『エコ・エコノミー』『 プランB』を刊行。国連環境計画賞、旭硝子財団ブループラネット賞など受賞多数。 http://www.es-inc.jp/lib/lester/index.html ・枝廣淳子:  29才から英語の勉強を始め、フリーランスの同時通訳者・翻訳者・環境ジャーナリ ストとなる。2002年、日本の環境情報を英語で世界に発信する非営利環境コミュニケ ーションプラットフォーム、ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)を共同設立 。日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2004キャリアクリエイト部門」受賞。 NHK「地球だい好き環境新時代」にコメンテーターとして出演中。100万人のキャンド ルナイト呼びかけ人代表。有限会社イーズ代表。 問い合わせ:TEL.&FAX.044-922-6130(有限会社イーズ) 主催:エコ・ネットワーキングの会(代表:枝廣淳子) 共催:ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)/有限会社イーズ http://www.japanfs.org/eco-network/ 後援:社団法人日本青年会議所、大地を守る会 、ナマケモノ倶楽部 ------------------------------------------------------ ■■Dr.コトー・環境情報シリーズ「イタイイタイ病〜すべては闇の中」  私が中学生の頃、公害問題が紙面をにぎわせていました。イタイイタイ病もそのひ とつです。富山県神通川、神の通る川とまで言われたこの川が、神岡鉱山の排出した カドミウムにより汚染され、腎障害とカルシウム代謝異常により骨折を起こし、患者 が“痛い痛い”と叫ぶのでこの名が付いた、というものです。当時私は、この公害の 書いてある本を読んで感想文まで書きました。公害は絶対良くない、と。  ところが、真実は今でもよくわからないのです。水俣病水銀、四日市喘息など他の 因果関係の明らかな公害に比べ、イタイイタイ病はその存在すら未だに闇の中なので す。  イタイイタイ病は富山県の開業医がカドミウムが原因と指摘し裁判でも認められ補 償も行われました。神岡鉱山は大切な国策としての企業なので国が公害を隠したとの 指摘もあります。しかし当時からこの公害の存在すら認めない意見も多くあったので す。そこには国、企業、左翼、住民、お金など様々な要因が絡んでいたようです。  当時、金沢大学医学部長が公害病患者認定会会長になりました。この医学部教授は 公害の存在を否定する意見を持っていました。工場排水を長期間マウスに投与しても 症状が再現されなかったからです。その結果、マスコミから袋だたきにあいました。  実はこの教授が私の恩師なのです。確かにこの病気は、今国民病として問題となっ ている“骨粗しょう症”と非常に区別が付きにくいのです。しかしながらこれを支持 する医師もいます。この問題は富山県ではタブー視されています。私の感じでは福井 県の福井空港建設問題と同じです。色んな条件が複雑に絡み合って、人間関係までが こじれているようです。私がイタイイタイ病を否定する意見があるのですね、と尋ね たら、カンカンに怒り出した同僚の医師が富山にいました。  15年前、私はこの川のそばに4年間住んで釣った魚を食べてました。有名な富山の 鱒寿司もこの川で採れた鱒を使ってました。もっとも今はすべて外国産です。  このように環境問題はしばしば真実が意図的に曲げられていることがあります。ま ず真実を知る智恵を身につけたいものです。(硬派な麺打ち職人より) ■■「クマの災難」(抜粋)  毎年、同様の問題は起きているのですが、今年は各地で台風の被害が大きかったた めに、エサとなる木の実などが落ちてしまって足りなくなり、件数がとても増えてい るのだそうです。台風が自然界に残した爪あとはさまざまなシーンで大きな影響を及 ぼしているということを改めて実感させられます。  そもそも、クマが人里にまで出てこなくてはならなくなったのは、人間がクマの生 活環境を破壊したからであり、台風で食料が少ないというのは二次的な理由です。そ れに出てきているのはクマだけじゃなく、イノシシだって、サルだって、タヌキだっ て出てきていますが、みんなクマほど怖くないだけ。クマは危ないから殺すというわ けです。でも、クマだって人間は怖いはず。それでも背に腹は変えられずに、危険を 犯して人間のところまで行き、案の定、運悪く見つかると殺されるわけですよね。  出てきたクマが人を襲うのは、人間が自分や我が子に危害を与えるから。射殺され たクマの多くが、未熟で判断力のないコグマか、コグマを連れた母グマのようですか ら、自己防衛本能のなせるわざです。雑食性のクマは「とって食う」ために人を襲う ことはまずないとか。生きるために、食料を得て、それを阻む敵から身を守るのは当 然のこと。クマを撃った人だって、クマを敵とみなしたからであって、射撃のように ゲームとして撃ったのではないでしょう。だからこそ、お互いに悲しい殺し合いでは ないですか?  専門家の話によれば、自然の中でクマの生息域と人間の住むところとの境目が、人 里に近づいてしまったとのこと。かつては民家と山の間に「里山」と呼ばれるところ がありました。これは簡単に言えば、人里と山との間にある、人の手が入っている自 然のことです。この「里山」を守ろうという運動がかねてよりありますが、まだ大き な動きにはなっておらず、たくさんの人の知るところではないようです。しかし、こ の「里山」がかつては動物達と人間との緩衝地帯になっていたのだそうです。ところ がさまざまな開発などにより、この「里山」が減ってきていて、加えて、クマのほう も以前ほど人間を怖がらなくなっている傾向にあるそうです。  そこで考えられた方策のひとつが、クマがちゃんと人間との距離をとるように、人 間の怖さを教えるというもの。殺したり、撃って脅すというのではなく、捕まえてク マに重大なケガをさせないように、かつ、「ひどい目にあった!」と思わせる効果を 見込んで、「唐辛子」の入ったスプレーをかけるという方法があるとのこと。これに 懲りて人間に近づかなくなるようにというやりかたです。  これを機会に子ども達にも自然や自然界の生き物との共存についてじっくり考えて もらいたいものですね。(フリーライター長晃枝) http://slowlife.goo.ne.jp/organicsmile/smile14.html ■■「続くクマの大量駆除と続発する人身事故について」(04/10/10)  今年になってすでに、900頭のツキノワグマが人里に出て来ては射殺されています 。我が国のツキノワグマの生息推定数は1万頭ですから、これは大変な数です。しか も、まだ冬眠まで二カ月もあるのです。このままいけば、今年一体どれだけの数のク マを殺すことになるのでしょうか。祖先が畏敬の念をもってこの国で共生して来たク マを、今年の大駆除で今、わたしたちは消そうとしているのです。このままでは、ツ キノワグマは絶滅です。北陸地方の猟友会員からも、ツキノワグマが絶滅する、内部 告発したいという声が本会に届いています。  クマたちの生息地であった奥山は、人間によるスキー場開発やスギの人工林化によ って、すでにクマたちが棲みづらい所になっています。さらに福井県や丹後半島など では、人間による地球温暖化によって亜熱帯性の虫が繁殖し、クマたちの貴重な秋の 食料であったミズナラの大木を壊滅的に枯死させてしまいました。その上、今年は地 域によっては、ブナ・ミズナラの凶作年にあたっており、8回の台風上陸という異常 気象も重なって、クマは一切の食料を失って山から出て来ています。  冬眠前の食いだめができず人里に出て来たクマたちを、連日、北陸地方を中心に人 が射殺しています。近年、山の実りの凶作年にクマたちが山から出て来ざるを得なく なったのは、人間にも大きな原因があります。人間の身勝手さ、無責任さを感じます 。子供たちを初め多くの人たちが、子グマを連れて空腹に耐え兼ねて民家のカキの木 に出て来たクマを射殺するTVニュースを、連日胸のつぶれる思いで見ています。人間 として、もっと優しい対応を考えるべきではないでしょうか。  すべての生き物たちの命、すべての産業を支えて来たのは、クマたちをはじめとす る野生動物たちが造ってきた豊かな奥山の自然林です。保水力抜群の奥山生態系を形 成して来たクマを失うことによる自然の劣化は、人間にとっても取り返しのつかない ものになります。 ◇人里に出て来たクマ対策については、どうか、わたしたちの兵庫県をご参考にして ください。兵庫県も以前は、里に出て来たクマを害獣として殺していました。しかし 、それでは絶滅してしまうことがわかり、現在、兵庫県はわたしたち自然保護団体を クマ絶滅防止部会に入れ、その声を聞いて大きく方向転換しています。  民家のカキにクマがついても駆除しません。ある地区では、集落のカキはすべてク マの食料になりました。イノシシ罠にかかったクマも、民家に入ってきたクマも、す べて放獣しています。今年9月末までの目撃件数は248件、過去最高ですが、一頭も殺 していません。ここまでしないと、クマのような生息地を破壊された生態系の頂点に 立つ動物は残せません。  住民の方たちもクマに対する理解を深め、正しい対応をとられており、クマによる 人身事故は1件のみです。クマは見かけと正反対で、とても臆病な動物です。追いか け回すことによって、人間に対する恐怖感をあおり、人と出会ったときの人身事故を 誘発してしまいます。里に出て来たクマには近寄らず、そっとしておくことによって 人身事故は防止できます。  今、人里に出て来ているクマは、わたしたちに日本の森の危機を知らせてくれてい ます。戦後の拡大造林によるスギ・ヒノキだけの人工林が奥山の広範囲を占めていま す。人工林に関しては、外から見ると青々とした美しい森ですが、森の中はスギ・ヒ ノキ以外の生物の生存をシャットアウトした一年中真っ暗の死の森です。この行き過 ぎた人工林は雨や台風で崩れやすく、それが原因で洪水も起きます。動物の棲めない 森は人の命や財産も脅かす森なのです。林業は大切ですが、持続可能な林業になるよ う植林地を縮小させ、一部を自然の森にもどすべきときです。行政は、奥山自然林保 全・復元の取り組みを、早急に開始してほしいです。 日本熊森協会会長 森山まり子(元中学校理科教諭) http://hb6.seikyou.ne.jp/home/kumamori/ ------------------------------------------------------ □□ことばピックアップ:レスター・ブラウン(アースポリシー研究所所長)  今の経済のアウトプットは、天然資源を使い尽くすことによって人工的に膨らま  している「バブル経済」です。耕し過ぎや放牧のし過ぎ、木の切り過ぎ、そして  魚のとり過ぎ、これらに支えられて今の経済は拡大しているのです。  どこかの地点でこれを続けることはできなくなります。自然の資本がそれに耐え  られなくなる。その時に今のバブル経済が破綻してしまうでしょう。  (03年8月17日「第3回エコネットワーキングの会」講演より) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆皆様からのフィードバック、情報提供をお待ちしています。 ☆ニュースのバックナンバーは下記ホームページで見ることが出来ます。 ☆このニュースを購読される方を是非ご紹介下さい。 ☆配信停止はこのメールに「配信不要」をペーストして返信して下さい。 ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★ 【発行】NPO法人エコプラザさばえ 鯖江市民活動交流センター内      〒916-0024 鯖江市長泉寺町1-9-20       (朝10時〜夜10時、日曜朝10時〜夜7時、月曜・祝祭日休館)     Tel.0778-54-8434 Fax.0778-54-7058     E-mail info@sabae-npo.org     Web  http://www.sabae-npo.org/ecoplaza/ 【編集】林 暁、真田俊子、辻子裕二 ●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●  エコプラザさばえメールニュース 第42号      2004年10月21日発行